今だから言える、開店秘話(?)。

乾いた寒い日が続きますね。皆様いかがお過ごしでしょうか。
私は店から持ち帰った道具類の収納をどうしたものやらと途方にくれる日々を送っております。

さて今回は、恐らく中々に非常識だった、近藤洋菓子店開店の経緯についてお話させて頂きます。

それは10年前の夏、ケーキ屋の販売のパートをしつつ乳児だった娘のお世話に勤しんでいた時の事。
ある日突然、主人が、
「家の近所にさあ、テナントの空き物件でてたんだよ。お前、ケーキ屋やったら?」
「…………ハイ?」
子育て経験者なら誰もが知ってる、初の子育ての大変さ、乳児の手のかかりよう。
しかし、即答でムリと返すのは、主人の性格を考えるとマズイし、私の事を思ってのことだろうから、取り敢えず内見して、正当な理由を整えて、NOを出そう。
そう考えて、家から徒歩二、三分のその場所に内見に向かいましたが、そこは退出後の片付けも清掃もされていなかったこともあり、誰が見てもケーキ屋の想像はできない物件だったので、あそこは厳しいよ、駅からも遠いし、車の停めるとこも歩道も確保されてない道路傍だし。
と、笑顔で内心ホッとしつつ取り下げ。
するとその一週間後、主人がやや興奮気味に、
「すごい良い物件があったんだよ!あそこなら気にいると思う。不動産屋に取り敢えずおさえてもらったから、店やるかやらないか、一週間で決めて!」
と………

そう来たか。
仕方ない、見に行きました。
それがあの店。

「どう?いいでしょ⁈」
「…いや……良いね…。」
「だろ⁈やれば⁈国金とか銀行の融資とか金の調達の手続きなら俺が全部やってやるから」
「…そりゃ、やりたいよ。でもね、借金しなきゃいけないんだよ、この子にだってこれからお金掛かるのに。第一、まだ乳飲み子なのに母親が今そんな事してる場合じゃないと思うし。」
「そんなんどうにでもなるでしょ、今時0歳から子供保育園入れて共働きなんてフツーだし。お前の姉さんだってそうでしょ」
「でも、自営で開店って、大変さのレベルが…」
「今が大変ならいつならいいわけ?今ならまだまあまあ若いし体力あるし親達も元気だし。そう、この子が大きくなってからとか言ってたら、親の介護とか始まったりするんだよ?」
「…でも、ケーキ屋って、きっとあなたが思ってるより大変なんだよ!」
「なんかさあ、お前って、言い訳ばっかしてない?ホントは自信ないんでしょ、てか、ホントにまともにケーキ作れんの?」
「‼️‼️‼️(ンだとおおおおおお〜‼️ふざけんなあ‼️と心の中で。)」
「…ホントにお金のことは見てくれるの?私、そういう知識無いから、ケーキ作りと現場の事しか出来ないよ。それに、あなたが物凄く大変になる事、わかってる?あなたの仕事だってこれから大変になるのに」
「なんとかなるっしょ。」

で。ホントにやってしまいました。その数日後に物件契約、契約から3ヶ月後、開店。
自己資金ゼロスタート。

『小さな店の開店マニュアル』みたいな本を読んでみると、まあ、色々含め一年はかけると書いてある。3ヶ月なんて、とんでもなかったかも知れません。

内装は、知り合いの内装デザイナーの方にほぼお任せ、厨房機器選びと器具の買物、業者さんとの契約交渉などのバタバタの中、子育て面では無理矢理に断乳も決行。

なぜ、十分でなかったにしても、やってしまえたのか、やってみようと思ってしまえたのか、そして主人はなぜやらせようとしたのか。

私は、「もし〜も〜 わたし〜が〜」(古い)じゃないですが、店をやるならこんな店、こんな商品構成、こんなレシピ、などなどのメモ書きを書き溜めた、妄想ノートをよく綴っておりました。
両親は、
「もうケーキなんて言ってないで、ご主人のお仕事をお手伝いしたりしてしっかり支えていかなきゃいけないのよ」と、良く私に言いました。
もちろんそのつもりでいたましたが、でも、現実味はなくても、独立の妄想は止めませんでした。
そして雑誌などで女性が自営で開店したという情報を得ると、その店に足を運んでは、(わかりやすく負け犬の遠吠えで)イチャモンつけてました(笑)。
主人はそんな私を見かねたのかも知れません。
私などに渋々の仕事の手伝いなんてムリだと思っていたのかも知れません。

以前働いていた、ケーキと紅茶が美味しいカフェのオーナーが言ったことも頭にありました。
「店を開くって、夢と希望に満ちてやるものだと思うでしょう。全てがそうじゃないのよ。私は、自分で食べて行く覚悟を決めるために、実家の家業でノウハウを知っていた喫茶店の開業を選んだのよ。夢と言うより、人生の選択よ。食べて行くためだから、必死。命懸けよ。」
そう、パティシエの仕事も、夢と希望に溢れてるように思われることが多く、私は元からそこに疑問を感じていました。パティシエはアーティストでもなければ他の職業と比べて夢ある職業な訳でもない。

肉体労働者だ。

そう、思っていました。だからこそ、芯から好きでないと続けられない。自分の肉体労働者根性を、本気を、試せる最後のチャンスかも知れないと思ったのです。

ま、売られたケンカ買った感が強い気もしますが。
そして、「石橋を叩いたのち、研究と計算を重ね、石橋でなく綱渡りにチャレンジする」主人の性格に引っ張られた感もかなりあり。

とまあ、こんな感じでした。
その後の大変さは言うに及ばず。
後悔しないなんてカッコいいことは口が裂けても言えません、しまくりでした。

でもなんとか続けていくうち、大きくて、貴重なものを、掴むことができました。

私は今後の人生で、「やっぱあの時が花だったなぁ、今思うとあの頃が人生で一番輝いてたんだろうなあ、、」と、出来れば、言いたくはありません。

店やってるのが凄くてかっこいいとか、全く思ってないですし。やったから言えるのですが。

ただ、近藤洋菓子店での必死の日々の、必死になる心を、失いたくはありません。

楽しいとは、幸せとは、笑ってることではない。
心が充実していることだ。

心が空にならないよう、これからも生きていきたいです。

それにしても、ケーキ作ってないと不安になってきます(笑)。
どうやら作ることは、好きを越して、習性になっているようです。

元旦は、オーブンを買いました。(家にはまともに焼けるの無かったんです)

どこまでできるか、家庭用オーブンへの挑戦を始めようと思います。

ではまた!
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by kondouyoogashi | 2017-01-07 20:22 | 日々雑記 | Comments(0)
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この店は、閉店致しました。が、blogは続く…


by kondouyoogashi
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